作問の備忘録

テスト問題を作るときの、大した計算ではないけれども、やろうと思うとめんどくさいことどもを記録。

二次関数の複雑な作問

実力テスト作成の際に考えたことなど。

二次関数の問題で、置き換えと解の符号の決定が絡んだ問題を作りたかった。

 (\hspace{2em})^2+2m(\hspace{2em})+(\hspace{2em})=0という形の二次方程式になる問題にして、1問目で変域をおさえ、2問目で具体的なmの値に対する解を求めさせ、3問目で4個の実数解を持つ条件を求めさせるようにしようとした。

満たすべき条件を以下のようにした。

1.y=f(x)をt(x)で置き換えた式が、y=g(t), g(t)=t^2-2mt+am+b(a,bは整数)の形であること

2. m=kのとき、g(t)=t^2-2kt+ak+bが簡単な(1桁程度の)整数解 \alpha,\betaをもつこと

3. t(x)=\alpha,t(x)=\betaを満たす xの値が、一方は異なる2つの実数、もう一方は異なる2つの虚数であること

4. g(t)=0の判別式D_1=m^2-am-b > 0,ただし、絶対不等式になってはいけない。できれば D_1=0が整数解をもってほしいが、簡単な平方根 \sqrt{R}(R=2,3,5,6)ならば含まれてもよい。ただし、ほかの2つの条件(軸、端の値)との大小が比べられなければならない。

 

2.について、整数解を \alpha,\betaとおくと、

 \alpha+\beta=2k,\alpha\beta=ak+b

ここでaを2の倍数として、 a=2p(pは整数)とおく。

 \alpha\beta=2kp+b

 \alpha\beta=p(\alpha+\beta)+b

 \alpha\beta-p\alpha-p\beta=b

 (\alpha-p)(\beta-p)=b+p^2

ここで、 b+p^2\neq1とする。なぜならば、pは整数、 \alpha,\betaを整数とすると、\alpha-p=\pm1,\beta-p=\pm1(複号同順)となってしまい、 \alpha=\betaになってしまうからだ。

 b+p^2=-1,b+p^2=2,\dotsといろいろやってみたが、うまくいかなかった。主な理由は、 \alpha,\betaの近さである。

3.の条件を満たすには、 \alpha,\betaの間にある程度の幅がなければならない。

 具体的にどれくらい幅があればよいか考えると、

 x^2+4x+c=\alpha,x^2+4x+c=\betaのとき、

 x^2+4x+c-\alpha=0,x^2+4x+c-\beta=0の判別式をそれぞれ D_2,D_3とすると、

 D_2=4-c+\alpha,D_3=4-c+\beta

 D_2 < 0,D_3 > 0とすると、

 \alpha < c-4 < \beta

整数 cを決定するには、 \alpha,\betaの間に3ぐらいの余裕は欲しい。

さてここで、4.の条件を満たすことを考えると、 m^2-am-b > 0である。ただし、 mの値によらず成り立ってはいけない。

 m^2-am-b=0の判別式を D_4とすると、

 D_4=a^2+4b > 0

 a=2pであり、b+p^2=qとすると、

 (2p)^2 > -4(q-p^2)

 0 < q

4.の条件は、 b+q^2を正の数にしておけばある程度クリアできることが分かる。

いろいろ試してみて、 b+p^2=5,p=4とした。

このとき、 a=2p=8,b=5-p^2=-11

 (\alpha-p)(\beta-p)=b+p^2に代入して、

 (\alpha-4)(\beta-4)=5で、\alpha < \betaとして、

 (\alpha-4,\beta-4)=(1, 5),(-5, -1)

 \alpha-4=1,\beta-4=5とすると、 \alpha=5,\beta=9

また、 \alpha+\beta=14=2k,k=7

つまり、 m=7のとき、t^2-2mt+8m-11=0は整数解t=5,9をもつ。

これで t(x)が自然な式になってくれているか、2.の条件を満たしているかを確認する。

 t=x^2+4x+cとおいてある。ちなみに、xの係数が4なのは、頂点の座標を整数にしたかったからだ。頂点のx座標が整数でないと、t座標も連動して整数でなくなる。すると、tの変域に整数以外の数が現れることになり、これが最後の小問「○○より大きい異なる2つの実数解」という条件を考える際に支障をきたす。cに整数以外をもってこれば調整はできるが、そうすると最初に問題として与える式が煩雑になる。

手計算ということも考えると、xの係数は4か6あたりが妥当。

さて、 \alpha=5,\beta=9と決定したので、

 5 < c-4 < 9つまり 9 < c <13

 c=10のときを考えると、 t=x^2+4x+10

計算してみると、ちょうどいい値になってくれた。

 

最終的な問題は以下のようになった。

 

mは定数とする。 x についての方程式 (x^2+4x+10)^2-2m(x^2+4x+10)+8m-11=0…①について、

次の問いに答えよ。

 (1)  t=x^2+4x+10とおくとき、 tの値の範囲を求めよ。

 (2)  m=7のとき、①の実数解を求めよ。

 (3) ①の異なる実数解が4個であるように、定数mの値の範囲を定めよ。

 

 

 

 

 

 

 

互除法の作問(フィボナッチもどきの利用)

互除法で余りが1になるまでの式の行数をコントロールしたかった。

作問の関係上、なるべく何の変哲もない数で、無限に生成できて、途中式の難易度もコントロールできるとなおよい。

 F_0=1,F_1=1,F_{n+2}=kF_n+F_{n+1}というフィボナッチもどきの数列を考えることにする。

k=1のときはフィボナッチ数列そのもので、これは隣り合う2項の畳数がどんどん増えていくのだった。

k=2のとき、きちんと証明はしていないが、どうも互除法の計算式がループし、畳数がループするようだった。初期値の与え方によってループの長さは変化する。

 

で、いくつか数を変えて試してみたところ、

どうも、 F_0=2,F_1=7,F_{n+2}=2F_n+F_{n+1}で生成される数列の隣り合う2項 F_n,F_{n+1}は、 n\geqq1のとき、常に畳数3になるようだ。

一般項は F_n=3\cdot2^n-(-1)^n (n\geqq0)である。

互いに素であることは簡単に示せる。

 ある k\geqq1 とする。 F_k,F_{k+1}に、共通因数 d\neq1が存在すると仮定すると、

 F_k=da,F_{k+1}=dbと表せる。

 db=2F_{k-1}+da

 d(b-a)=2F_{k-1}

ここで, F_0=2,F_1=7,F_{n+2}=2F_n+F_{n+1}から、各 F_n (n=1,2,3…)は奇数、 F_k < F_{k+1}なので、

 d,a,bは奇数、 b-a=2N(Nは自然数)と表せる。

 2dN=2F_{k-1}

 F_{k-1}=dN

 F_{k-1} dの倍数である。

これを繰り返すと、 k以下の項はすべて dの倍数となるが、

これは F_1=7,F_2=11に矛盾。

よって、 F_n,F_{n+1} (n\geqq0)は互いに素である。

 

さて、 n \geqq 1 F_n,F_{n+1}の畳数が3であることを示そう。

 F_{2k-1},F_{2k}(k\geqq 1)について、

 F_{2k-1}=3\cdot2^{2k-1}-(-1)^{2k-1}=3\cdot2^{2k-1}+1

 F_{2k}=3\cdot2^{2k}-(-1)^{2k}=3\cdot2^{2k}-1

 F_{2k}-F_{2k-1}=3\cdot(2^{2k}-2^{2k-1})-2

 F_{2k}-F_{2k-1}=3\cdot2^{2k-1}-2

 F_{2k}-F_{2k-1}=F_{2k-1}-3

 F_{2k}=F_{2k-1}+(F_{2k-1}-3)

また、

 F_{2k-1}-3=3\cdot2^{2k-1}-2\equiv1(\bmod3)

よって、

 F_{2k}=F_{2k-1}+(F_{2k-1}-3)

 F_{2k-1}=(F_{2k-1}-3)+3

 F_{2k-1}-3=3m+1(mは整数)

畳数は常に3である。

 F_{2k},F_{2k+1}(k\geqq1)について、

 F_{2k+1}=3\cdot2^{2k+1}-(-1)^{2k+1}=3\cdot2^{2k+1}+1

 F_{2k}=3\cdot2^{2k}-(-1)^{2k}=3\cdot2^{2k}-1

 2F_{2k}=3\cdot2^{2k+1}-2

 F_{2k+1}=2F_{2k}+3

また、 F_{2k}=3\cdot2^{2k}-1\equiv2(\bmod3)

よって、

 F_{2k+1}=2F_{2k}+3 \hspace{.5em}(k\geqq1なのでF_{2k} > 3)

 F_{2k}=3(2^{2k}-1)+2

 3=2\cdot1+1

畳数は常に3である。

ゆえに、 F_0=2,F_1=7,F_{n+2}=2F_n+F_{n+1}の隣り合う2項 F_n,F_{n+1}(n\geqq1)は畳数3である。

 

有理化の作問

分母が何項までなら有理化可能か。

 \frac{1}{\sqrt{a_1}+\sqrt{a_2}+…+\sqrt{a_n}}ただし a_1,a_2,…,a_nは互いに素とする。

 

3項の場合

2つの項をひとかたまりとして2項のときの有理化をすればよい。

大事なのは、このとき項の種類が減るかどうかである。

 \frac{1}{\sqrt{a}+\sqrt{b}+\sqrt{c}}=\frac{1}{(\sqrt{a}+\sqrt{b})+\sqrt{c}}

 =\frac{\sqrt{a}+\sqrt{b}-\sqrt{c}}{(\sqrt{a}+\sqrt{b})^2-c}

 =\frac{\sqrt{a}+\sqrt{b}-\sqrt{c}}{a+2\sqrt{ab}+b-c}

 =\frac{\sqrt{a}+\sqrt{b}-\sqrt{c}}{(a+b-c)+2\sqrt{ab}}

分母は2項になっているので、ここからもう一度2項の有理化をすれば有理化は完了する。

 (\sqrt{a}+\sqrt{b})^2=(a+b)+2\sqrt{ab}

で、この部分の項の個数は変わらないが、残りが {\sqrt{c}}^2でcになるのでトータルで項は3項から2項に必ず減ることになる。

だから、心配せずに好きな数を選べばよい。

 

 

4項の場合

前半2項と後半2項でそれぞれひとかたまりとすればよい。

 \frac{1}{\sqrt{a}+\sqrt{b}+\sqrt{c}+\sqrt{d}}について、

 (\sqrt{a}+\sqrt{b})^2=(a+b)+2\sqrt{ab}, (\sqrt{c}+\sqrt{d})^2=(c+d)+2\sqrt{cd}

なので、トータルで4項から3項に減らせる。つまりこれも常に有理化が可能である。

しかし、4項の場合は、分け方が悪いとループにはまる。

3項をひとかたまりとすると、

 (\sqrt{a}+\sqrt{b}+\sqrt{c})^2=(a+b+c)+2\sqrt{ab}+2\sqrt{bc}+2\sqrt{ca}

で、3項から4項に増え、残りのdを合わせてもトータルで4項から減らないので、終わらなくなってしまう。

 

5項の場合

 \frac{1}{(\sqrt{a}+\sqrt{b})+(\sqrt{c}+\sqrt{d}+\sqrt{e})}

分子を書くのは面倒な上に今回無意味なので、Aと置くことにする。

 \frac{A}{(\sqrt{a}+\sqrt{b})^2-(\sqrt{c}+\sqrt{d}+\sqrt{e})^2}

 =\frac{A}{((a+b)+2\sqrt{ab})-((c+d+e)+2\sqrt{cd}+2\sqrt{de}+2\sqrt{ec})}

根号の外れた部分も面倒なのでまとめてCとおく。分母の真ん中に置くことにする。

 \frac{A}{2\sqrt{ab}+2\sqrt{cd}+C+2\sqrt{de}+2\sqrt{ec}}

 =\frac{A}{(2\sqrt{ab}+2\sqrt{cd}+C)+(2\sqrt{de}+2\sqrt{ec})}

 =\frac{A}{4\sqrt{ab}+2(2+e)\sqrt{cd}+C+8\sqrt{abcd}}

5項から4項になったので有理化可能。

 

6項になると、うまくいかない。

3つずつ組にしても前半4項、後半4項、そのうちまとめられるのは根号の外れた1つだけなので、トータルで6項から7項になってしまう。

2項と4項に分けても、前半2項、後半は7項となり、結局8項に増えてしまう。

 

この話は \sqrt{}の中が互いに素であることを前提としているが、含まれる項が \sqrt{ab},\sqrt{c},\sqrt{a},\sqrt{bc}という形になったりすると話はややこしくなってくる。

 また、 (a+b)(a-b)=a^2-b^2以外の式を利用して有理化ができる可能性はまだ残っている。

 

互除法の作問

 ax+by=1 の整数解(x,y)を求めよ」のような問題は、 a,bに互いに素である整数を選べばいくらでも作れる。

しかし問題作成者の立場で考えると、それが「何行の計算で終わるのか」が重要になってくる。

互いに素である整数 a,bについて、互除法をしたときに1に到達するまでの式の行数をここでは畳数と呼び、 f(a,b)と書くことにする。

例えば、3と2の場合、 3=2\times 1+1で、 f(3,2)=1

 f(5,2)=1,f(5,3)=2である。

 

a,bに求める条件は、

1.3桁以下の整数である。

2.畳数が3以下である。

 

最も簡単に作るには、1からスタートして単純に足し算を繰り返せばよい。

要はフィボナッチ数列を考えればよいのだ。

フィボナッチ数列 F_{n+2}=F_{n}+F_{n+1},F_0=1,F_1=1の隣り合う2つの項 F_n,F_{n+1}(n \geqq 2)は、必ず互いに素、畳数 (n-1)になる。

つまり、8と5にすればよい。

 

畳数3程度ならば、excelなどでごり押してもよいと思うが、

畳数が常に3になるような2つの式を作ることが理想である。

フィボナッチ数列の2項は式で表せるのだから、できないことはないと思う。

 

判別式の作問

 x^2+(m+1)x+m=0が重解をもつときのmの値とその重解を求めよ。」のような

2次方程式の判別式の問題を作りたい。

作問にあたって満たしたい条件は、

1. x^2+(m-p)x+c=0 (p,cは整数)の形であること

2.判別式からなる2次方程式を解いたときの解が整数であること

 

 x^2+(m-p)x+c=0 (p,cは整数)から、

 (m-p)^2-4c=0 が整数解を持てばよい。

 m^2-2pm+p^2-4c=0

判別式をDとすると、

 D=(2p)^2-4(p^2-4c)

 D=16c

2つの整数解を \alpha,\betaとすると、

 D=(\beta-\alpha)^2=16c

 \alpha-\beta=\pm4\sqrt c cは平方数であればよい。

 \sqrt c=qとおくと、

 2\alpha=2p\pm4q

 \alpha=p\pm2q,\beta=p\mp2q (複号同順) ただし、 p,q,任意の整数,c=q^2

 

 

60°の角をなす空間ベクトルの作問

1.60度の角をなす。

2.現れる成分がすべて整数。

を満たす2つのベクトルを作りたい。

平面上ではこのようなベクトルを作ることはできないが、空間上では可能である。

結論としては、

m,nを整数として、

 \vec{a}=(2n-3m,3n-m,n+2m)

 \vec{b}=(-n-2m,2n-3m,3n-m)

で無限に生成できる。

 

方法はごり押しである。

 \vec{a}=(a,b,c),\vec{b}=(d,e,f)とおいて、

60°の角をなす条件を整理すると、

 (ae-bd)^2+(af-cd)^2+(bf-ce)^2=3(ad+be+cf)^2

ここで、左辺の平方されている数がすべて同じ値であると仮定して、

 ae-bd=ad+be+cf

 a(e-d)=b(e+d)+cf

さらにここで、 e-d=f,e+d=c,b=f,a=2cとおくと明らかに成立。

 ae-bd=af-cd=bf-ceの仮定から連立方程式を解くと、

 f=3c,\frac{d}{2}

 f=3cのとき、e=2c,d=-c,a=2c,b=3cとなる。

ちなみに f=\frac{d}{2}のときは式同士が矛盾してうまくいかない。

 \vec{a}=(2c,3c,c),\vec{b}=(-c,2c,3c)とすれば条件を満たすことがわかる。

 

 |\vec{a}|=|\vec{b}|を満たすので、 C(\vec{0}),A(\vec{a}),B(\vec{b})は正三角形をなす。

特にc=1のときのみを考えればよい。

 \vec{a}=(2,3,1),\vec{b}=(-1,2,3)のとき、この正三角形の各辺を m:nに内分する点をとり、これらをつないでできる正三角形を m+n倍に拡大すれば、条件を満たすベクトルを無限に作ることができる。

よって、

 \vec{a}=(2n-3m,3n-m,n+2m), \vec{b}=(-n-2m,2n-3m,3n-m)

とすればよい。

もちろんこれは \vec{a}=(2,3,1),\vec{b}=(-1,2,3)の張る平面上のものしか作れないので必要十分条件ではないが、作問には十分だろう。

 

 

45度の角をなす2直線の傾きの決定

2直線の方程式からなす角を求める問題を作りたい。

1.なす角は45度。

2.2直線の傾きはともに有理数

 

生成する式はいくらでも作れる。

加法定理からごちゃごちゃ計算していたら、友人に次の図で瞬殺されてへこんだ。

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