作問の備忘録

テスト問題を作るときの、大した計算ではないけれども、やろうと思うとめんどくさいことどもを記録。

余弦定理の作問(角度を求めなくてよい場合)

例えば、△ABCの3辺から余弦を求めさせて、正弦、面積を求めさせる問題では、有名角を用いる必要はないので、作問は楽になる。

しかし、余弦を求める際のハードルはなるべく下げておきたい。

1.三角形の3辺はすべて整数。

2.余弦を求めたとき、分母が2桁以上にならない。

以上を満たす3辺の組を考える。

 

 \cos{C}=\frac{n}{m} (m,nは1桁の自然数,n,mは互いに素,n < m)とおく。

 c^2=a^2+b^2-2ab\cos{C}

 c^2=a^2+b^2-2ab\cdot \frac{n}{m}

 mc^2=ma^2+mb^2-2nab

 ma^2-2nba+m(b^2-c^2)=0

 a=\frac{nb \pm \sqrt{n^2b^2-m^2(b^2-c^2)}}{m}

 a=\frac{n}{m}b\pm\sqrt{(c^2-b^2)-(\frac{n}{m}b)^2}

ここで、bがmの倍数として、 \frac{n}{m}b=pとすると、

 a=p\pm\sqrt{c^2-(b^2+p^2)}

 

これを満たすp,b,cを作ればよいが面倒そうなので、余弦を求める分数がうまく割り切れるのはどういう時か考えてみる。

例えば、3辺が n,n+1,n+2となる場合は単純な分数になる。

なぜならば、

 \cos{C}=\frac{n^2+(n+1)^2-(n+2)^2}{2n(n+1)}

 \hspace{2em} =\frac{n^2-2n-3}{2n(n+1)}

 \hspace{2em} =\frac{(n-3)(n+1)}{2n(n+1)}

\hspace{2em} =\frac{n-3}{2n}

特にnが奇数のときや3の倍数のとき、より簡単な分数になる。

 ちなみに、このとき

 \cos{A}=\frac{n^2+2n+3}{2n(n+2)}

これはnが奇数か3の倍数か3で割ると1余る数のときに約分ができるので、割と簡単な分数にしやすい。

 \cos{B}=\frac{n+5}{2(n+2)}

これもnが奇数のときや3で割って1余る数のとき、より簡単な分数になる。

 

また、3辺が n,n+1,n+2となる場合から一般化して、

3辺が n,n+k,n+2k(kは自然数)としても簡単になることがわかる。

60度の角をもつ整数辺三角形の作問

次のような条件を満たす余弦定理の問題を作りたい。

1.3辺を与えて角を求める問題。

2.求める角は60度である。

3.3辺はすべて整数である。

4.正三角形は自明として避ける。

5.整数は最大でも16まで。

これらに当てはまる3辺の組を「解」と呼ぶことにする。 

 

 C=60°として、

 c^2=a^2+b^2-ab

から、

 a^2-ba+b^2-c^2=0

 a=\frac{b \pm \sqrt{b^2-4(b^2-c^2)}}{2}

 a=\frac{b \pm \sqrt{4c^2-3b^2}}{2}

4c^2-3b^2=k^2とおくと、

 (2c-k)(2c+k)=3b^2

 2c-k <  2c+k、またこれらの偶奇は一致する。

あまり良い方法も思いつかないので、しらみつぶしでやることにする。

 

 b=1のとき、

 (2c-k)(2c+k)=3

 2c-k=1,2c+k=3

 4c=4から c=1

このとき、 a=b=c=1で自明。

 

 b=2のとき、

 (2c-k)(2c+k)=12

 (2c-k,2c+k)=(2,6)

必ず自明(正三角形)の場合が1つ含まれるので、この時点で打ち切り。

ちなみに、 2c-k=bのとき自明である。

 b(2c+k)=3b^2

 b(2c+2c-b)=3b^2

 b(4c-b)=3b^2

 4bc=4b^2

 b \neq 0なので、

 b=cまた b=c=kで、a=\frac{b \pm b}{2}よって a=b=c

 

 b=3のとき、

 (2c-k)(2c+k)=27

 (2c-k,2c+k)=(1,27),(3,9)

(3,9)の方は自明。

(1,27)のとき、

 4c=28 から c=7 

 k=13で、a=\frac{3 \pm 13}{2}

 a=8,-5

 (a,b,c)=(8, 3, 7)が求めたい最初の解となる。

ここで、残りの a=-5に注目すると、実は(8, 5, 7)も解となる。

60°の場合、1つの解 (a, b, c)に対し, (a, a-b , c)も解となる。

一般に、 c^2=a^2+b^2-2ab\cos{C}を満たす (a, b, c)に対し、

 bを2a\cos{C}-bと置き換えたものも解となる。

 

 b=4のとき、

 (2c-k)(2c+k)=48

自明でないものは、

 (2c-k,2c+k)=(2,24),(6,8)

(2,24)のとき、

 4c=26から, c=\frac{13}{2}

しかしこれは有理数なので、2倍に拡大した三角形を考えることで解を求めることができる。

 b=8,c=13のとき、 (26-k)(26+k)=4 \cdot 48 から、k=22

 a=\frac{8 \pm 22}{2}

 a=15, -7

 (a,b,c)=(15,8,13),(15,7,13)

 2c-k,2c+kの偶奇は一致するので、和 4cの値は必ず偶数になる。

つまり、cの分母は1か2で、このような拡大は2倍の場合のみ考えればよいことが分かる。

(6,8)のとき、

 4c=14

 c=\frac{7}{2}これは2倍すると既出のものと一致する。

 b=8,c=7となるので、 a=5,3となる。

 

この先探索を続けると、2桁に突入し、結局条件を満たすものは(8, 3, 7),(8, 5, 7),(15, 8, 13),(15,7,13)ということが分かる。

 

ちなみに,ここから120°バージョンを作るのは簡単だ。

60°バージョンを解いたときの、負の方の解がそれにあたる。

例えば (a,b,c)=(8,3,7)を求めたときのもう一つのaの値は-5なので、

 (a,b,c)=(5,3,7)が120°の方の解になる。

 

45°や135°の場合

 c^2=a^2+b^2\pm\sqrt{2}abから、もちろんすべてを整数にすることは不可能なので、

 a=p \sqrt{2} (pは自然数)とおくと、

 c^2=2p^2+b^2 \pm 2pb

 c^2=p^2+(p \pm b)^2

ピタゴラス数1組に対し、3辺の組を1つ作ることができることがわかる。