作問の備忘録

テスト問題を作るときの、大した計算ではないけれども、やろうと思うとめんどくさいことどもを記録。

連立合同式

整数の性質の問題で,

「aを整数とする。a+2は4の倍数、a+3は7の倍数であるとき,a+10が28の倍数であることを示せ。」

という問題を量産したい。

 

「a+pはmの倍数,a+qはnの倍数であるとき,a+rがmnの倍数であることを示せ。」

と置くことができるが,

m,nが互いに素であれば、p,qにどのような数を選んでもrを0以上mn未満の整数からただ1つ決めることができる。

いわゆる「中国人の剰余の定理」である。

ざっくり言えば,互いに素である2つの法m,nによる余りを使ってタグ付けすると,mn通りの数を分類できるという話だ。

 

まぁ、数をmn個並べて余りを出しておいてそこから選べばいいよね。

辞書式配列の問題の解法

地道に性質を調べて式を作っていくだけ。

 

n個の異なる文字 a_0,a_1,\dots,a_{n-1}を辞書式に並べたとき、与えられた文字列が何番目にあるかを求める。

① 文字の若い順に 0,1,2,…,n-1の数を当てはめる。

② その数より左にある数を見て、その数より小さい数が何個あるかを①の下にかく。

③ ①の数から②の数をそれぞれ引く。これを左から順に b_1,b_2,\dots,b_nとする。

④ \displaystyle 1+\sum_{m=1}^{n} b_m (n-m)! 番目

 

「どっちが若い文字か間違える」という数学とは関係ないミスを最小限にできるメリットがあり、導出も生徒の考える練習に良いと思うが、結果だけ覚えてテストで使う人間が出るので一長一短。

式の不変と図形の不変

これは作問とは少しずれるが、今の教科書にはもっと、代数的な見方があっていいんじゃないだろうか。特に「対称式の問題」がただのテクニックの習得になってしまっていて、「対称式」という言葉をあてるのに相応しくないと思うのだ。

「対称式」という言葉を出す以上は、

・「対称式」と「対称式でない式」を生徒が区別できるようにする

・対称であることによって、どんなことが起こるのかを考察させる

ことが必須ではないか。

 

 対称式が自然に出てくるのは、2次方程式の解と係数の関係からだ。ここで解の入れ替えをしても係数が変わらないことに注目させるのはもちろんだが、さらに「入れ替えに関して不変」という性質をいろんなところで試してみるのはどうだろう。

「入れ替えても不変のはずの量」はどこにあるか。

例えば三角形だ。△ABCで辺が入れ替わっても不変でなけらばならない量とは何か。面積だ。じゃあ、面積の式は対称式かもしれない、と予想させた上で、ヘロンの公式を調べる活動を仕組めば、「入れ替えに関して不変」がよくわかるだろう。

一方で、「対称式で表された量」はどこにあるか。

例えば重心はどうか。3頂点のx座標、y座標をそれぞれ適当に入れ替えた三角形をいくつか作り、指の上にのせさせてはどうか。

複素数平面までやっていれば、解が複素数平面上で正三角形をなす3次方程式を作らせることもできるだろう。その3つの解が、1の3乗根の半径拡大・縮小、回転、平行移動で必ず表せることも示せるだろう。

 

ワックスの残量

  学校ならではのイベント、それはワックスがけ。学校にもよるが、裏でその準備をするのは係に当たった教員である。18リットル入りの缶をうまく使い切るのはまれで、大体、半年前の余ったワックスを使うことになる。

 これは係を任された人間にとっては地味に問題である。果たして今ある残量は今回のワックスがけに足りるのだろうか。もし足りなければ早急に発注しなければならない。けれど、足りると分かっているならああいうめんどくさい書類作成はしなくてよいのだ。

 

缶に入ったワックスの残量を知るにはどうすればよいだろうか。

ゆすってみてものぞいてみても何もわからない。棒を突っ込んでみる手もなくはないが、正しい液面の高さが計れるとは思えない。

計れるのは缶の寸法と、傾けたときに出始めるタイミングぐらいのものである。

 

数学の出番だ。 

缶の底面の半径をr,高さをh,傾けたときの、地面と缶の側面がなす角をα,求める体積をVとしよう。

図に書いてみるとわかるが、これは受験数学の定番問題に似ている(2017 大阪市大など)。しかし、油断して何も考えずに計算しだすと結構つらい。入試問題がなぜ底面の直径を超えないようにしているかがよくわかる。難易度的には、受験が終わった生徒の春休み課題にちょうどいいかもしれない。進学校で数Ⅲまで習って缶コーヒーの残量すら計算できない理系がいていいわけがないだろう。

 

結論は、

A=\arccos(1-\frac{h}{r}\tan\alpha)とおくとき,

V = \frac {r^3} { \tan \alpha }(- A \cos A+\sin A - \frac {1} {3} \sin^3 A)  (0 \lt x \leqq \arctan ( \frac {2r} {h} ) )
V = \pi r^2 (h - \frac {r} {\tan \alpha} ) (\arctan (\frac {2r} {h}) \lt x \lt \frac{\pi}{2})

となるはず。

 

が、こんな式では使い物にならない。大事なのは近似だ。

次数のなるべく低い多項式で近似したい。

○回勝負の勝敗

例えば、「A,Bが試合をして、先に○回勝った方を優勝とするとき、Aが優勝する勝敗の順は何通りか。ただし、引き分けはないものとする。」のような問題は、樹形図の問題として出ているが、もちろん出題者はあらかじめ答えを知っていなければならない。

計算で求めるにはどうすればよいか。

 

引き分けなしの場合をまず考える。

xy平面上で、x座標をAの勝ち数、y座標をBの勝ち数とすればよい。

 n勝で優勝とすると、これは座標を減らさずに (0,0)から(n,n)に1マスずつ向かうのと同じことなので、最短経路のうち、 x=n上の点にたどり着いた経路の数を足せばよい。

\displaystyle \sum_{r=1}^{n}{}_{\{2n-(r+1)\}}\mathrm{C}_{(n-1)}

 

引き分けありの場合(大抵は「引き分けは連続しない」という条件がつけてある)

一つの勝敗の順に対し、引き分けを挿入できる場所を考えればよい。

例えば4勝で優勝の場合、A-A-A-Aならば、

「-」にするか「-分-」にするかという箇所が3か所できるので、 2^3をかければよい。

Bの勝ちが入って試合数が増えると累乗の指数がそれに伴って増える。

A-A-A-B-Aに対しては、 2^4をかけることになる。

\displaystyle \sum_{r=1}^{n}{}_{(2n-r-1)}\mathrm{C}_{(n-1)}\cdot2^{(2n-r-1)}

 

3行の互除法の作問(ある程度解決)

~続いた~

別の方向からある程度解決したので書いていく。

ひたすらいろんな数を試した結果、フィボナッチがどうとかいう問題ではなく、

 F_n=(r+1)r^n-(-1)^n (rは2以上の自然数)

の形の数列が畳数3であることが分かった。

 

証) 

 F_n=(r+1)\cdot r^n-(-1)^nに対し、

 F_{2k}=(r-1)F_{2k-1}+\{ F_{2k-1}-(r+1) \}を示す。

 (右辺)=rF_{2k-1}-(r+1)

 \hspace{2.7em}=(r+1)r^{2k}-r(-1)^{2k-1}-(r+1)

 \hspace{2.7em}=(r+1)r^{2k}+r-r-1

 \hspace{2.7em}=(r+1)r^{2k}-1

 \hspace{2.7em}=(r+1)r^{2k}-(-1)^{2k}

 \hspace{2.7em}=F_{2k}

また、

 F_{2k-1}=\{ F_{2k-1}-(r+1) \}+(r+1)

ここで、 F_{2k-1}-(r+1)-(r+1)=(r+1)r^{2k-1}-2r-1

 r\geqq2, k\geqq 1なので,明らかに正。

このとき、余りは r+1である。

 F_{2k-1}-(r+1)=(r+1)r^{2k-1}-(-1)^{2k-1}-(r+1)

 \hspace{6.75em}=(r+1)r^{2k-1}-r

 \hspace{6.75em}=(r+1)r^{2k-1}-(r+1)+1 \equiv 1 (\bmod r+1)

次に、

 F_{2k+1}=rF_{2k}+(r+1)を示す。

 (右辺)=rF_{2k}+(r+1)

 \hspace{2.7em}=r\{(r+1)r^{2k}-(-1)^{2k}\}+r+1

 \hspace{2.7em}=(r+1)r^{2k+1}-r+r+1

 \hspace{2.7em}=(r+1)r^{2k+1}+1

 \hspace{2.7em}=F_{2k+1}

また、

 F_{2k+1}=rF_{2k}+(r+1)において、

 F_{2k}-(r+1)=(r+1)r^{2k}-r-2

明らかに正。

余りは r+1

 F_{2k}=(r+1)r^{2k}-(-1)^{2k}

 \hspace{1.75em}=(r+1)r^{2k}-1

 \hspace{1.75em}=(r+1)r^{2k}-(r+1)+r \equiv r (\bmod r+1)

以上より、

 F_n=(r+1)r^n-(-1)^nの隣り合う2項は畳数3となる。

一般化へ

なぜ、 F_n=3\cdot2^n-(-1)^nではうまく畳数を固定できたのか考えてみる。

まず、 F_{2k}=F_{2k-1}+F_{2k-1}-3について、

 F_{2k}に対し、F_{2k-1}=\frac{F_{2k}+p}{2}(pは自然数)という形になっているので、必ず次の式では F_{2k-1}=(F_{2k-1}-p)+pとなり、pが余ることになる。

(かといって、これをそのまま解いて F_n=(F_1-p)\cdot2^{n-1}+pとしても条件が足りなくてうまくいかない。)

あとはこのpに対し、 F_{2k-1}-p=pm+1(mは整数)の形をしていればよい。

では逆回しをしてみよう。

(1) pで割ると常に1余る式を考える。

(2) (1)にpを足して F_{2k-1}とする。

(3) (2)を2倍してpを引き、 F_{2k}とする。

今、フィボナッチ数列に似た漸化式をもとにしているので、

一般項は F_n=ar^n+bs^nという形の式になる。

(1)を満たすためには、 F_n=ar^n+1としてしまうのが手っ取り早い。

 

しかし、もう一つ条件がある。

 F_{2k}とF_{2k+1}について、

 F_{2k+1}=2F_{2k}+q(F_{2k} > qとして余りをqにする) 

次の式は F_{2k}をqで割ることになるが、

 F_{2k}=ar^{2k}+bs^{2k}の形のとき、

 bs^{2k}をaで割った余りが固定されるようにする。

 (s^2)^kをaで割った余りが固定される、つまりs^2 \equiv 1 (\bmod a)であればよい。

そのうえで、q=aとする。

しかし、 F_n=ar^n+1とするとここで問題が起こってしまう。

2行目の式ですでに1に到達してしまうのだ。

これを防ぐには b\neq1とすればよい。

 

 ~つづく~