作問の備忘録

テスト問題を作るときの、大した計算ではないけれども、やろうと思うとめんどくさいことどもを記録。

ワックスの残量

  学校ならではのイベント、それはワックスがけ。学校にもよるが、裏でその準備をするのは係に当たった教員である。18リットル入りの缶をうまく使い切るのはまれで、大体、半年前の余ったワックスを使うことになる。

 これは係を任された人間にとっては地味に問題である。果たして今ある残量は今回のワックスがけに足りるのだろうか。もし足りなければ早急に発注しなければならない。けれど、足りると分かっているならああいうめんどくさい書類作成はしなくてよいのだ。

 

缶に入ったワックスの残量を知るにはどうすればよいだろうか。

ゆすってみてものぞいてみても何もわからない。棒を突っ込んでみる手もなくはないが、正しい液面の高さが計れるとは思えない。

計れるのは缶の寸法と、傾けたときに出始めるタイミングぐらいのものである。

 

数学の出番だ。 

缶の底面の半径をr,高さをh,傾けたときの、地面と缶の側面がなす角をα,求める体積をVとしよう。

図に書いてみるとわかるが、これは受験数学の定番問題に似ている(2017 大阪市大など)。しかし、油断して何も考えずに計算しだすと結構つらい。入試問題がなぜ底面の直径を超えないようにしているかがよくわかる。難易度的には、受験が終わった生徒の春休み課題にちょうどいいかもしれない。進学校で数Ⅲまで習って缶コーヒーの残量すら計算できない理系がいていいわけがないだろう。

 

結論は、

A=\arccos(1-\frac{h}{r}\tan\alpha)とおくとき,

V = \frac {r^3} { \tan \alpha }(- A \cos A+\sin A - \frac {1} {3} \sin^3 A)  (0 \lt x \leqq \arctan ( \frac {2r} {h} ) )
V = \pi r^2 (h - \frac {r} {\tan \alpha} ) (\arctan (\frac {2r} {h}) \lt x \lt \frac{\pi}{2})

となるはず。

 

が、こんな式では使い物にならない。大事なのは近似だ。

次数のなるべく低い多項式で近似したい。